期間:2023年7月8日(土)- 7月25日(火)
日東堂は、「日本の藝と道具」の未来を担う作り手を応援しています。
11回目となるこのたびの展示では、
入江佑子さんの作品を展示・販売いたします。
![](https://nittodo.jp/wordpress/wp-content/uploads/2023/07/DSC_6299.jpg)
やわらかなフォルムと、
ざらついたテクスチャ。
入江さんの手がける作品は、
見る人を緊張させない、
やさしいあいまいさを纏っています。
陶芸作品にはおおむね、
正面と呼ばれるビューポイントが
決まっているものですが、
入江さんの作品にはそれがありません。
どこからどのように見てもその時々の見え方があり、
作者の設定した作品への視点を見る側に感じさせない
佇まいに目が安まります。
そのような余白のある作品が
どのように生まれるのか、お話をお伺いしました。
![](https://nittodo.jp/wordpress/wp-content/uploads/2023/07/DSC_6284.jpg)
美術大学で陶芸によるオブジェを
制作していた入江さんは、
当時から自身の作品から感じられる作為を
とても敏感に捉えていました。
考えてつくると、
見たことのあるものになってしまうという思いから、
泥状にした土を流れるままの形で作品にしたものや、
簡単に割れてしまうごく薄いものなど、
素材の動きや性質に優しく手を添えるような
作品づくりを心がけていたそうです。
そのような自由で制限のない表現から、
用途のある器や道具という制限のある中で
自身の表現を模索することへと
好奇心が移り変わり、
現在の作品づくりが始まりました。
入江さんの作品は、
かろうじて機能を満たす道具であり、
限りなくオブジェに近いと言えます。
近くの川で拾ってきた石を箸置きとして使うように、
ものの使い途は使用者によって
見出される側面があるはずです。
道具であるというただ一つの制限の中で、
めいっぱい自由につくられる作品のおおらかさは、
思いもよらない使い途を
示してくれるかも知れません。
![](https://nittodo.jp/wordpress/wp-content/uploads/2023/07/DSC_6288-1.jpg)
作品が作品たる理由は、
ひとえに作家が制作の手を止めるまでの感覚が、
われわれが見て触れられる形あるものに
写し取られているからです。
とくに、入江さんのように
対称性や正確性から解放された作品の形からは、
そのような作家の感性がより強く感じられます。
また、入江さん自身も
できあがった作品の形をとおして
今の自身の状態を確認するような
側面があるそうです。
正解をはじめから決めることなく、
手の感覚に従いながら、
今まさに自分が気持ちいいと感じるかたちを
写しとる姿勢は、
とても素直で正直な制作手法ではないでしょうか。
そんな健やかな手から生まれるからこそ、
見た人の心がほどけるような
作品になるのかも知れません。
ぜひ、会場でご覧いただければ幸いです。