期間:2023年5月13日(土)- 5月28日(日)
日東堂は、「日本の藝と道具」の未来を担う作り手を応援しています。
10回目となるこのたびの展示では、
陶芸家の竹内保史さん、近藤康弘さんの作品を展示・販売いたします。
まずは、竹内保史さんをご紹介いたします。
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王地山焼は江戸時代末期から50年間だけ焼かれていた
兵庫県丹波篠山市の伝統的な磁器です。
繊細な文様と独特な色の釉薬の美しさが評価され、
おおいに栄えました。
明治に入り一度は廃窯したものの
昭和63 年に有志により
再度同じ丹波篠山の地に復興され、今に至ります。
王地山陶器所に所属している竹内さんは、
伝統的な技法を保存し継承する役割を持つ職人であり、
現代的な表現を通して王地山焼における歴史の拡張を試みる実践者でもあります。
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特に流麗鎬(りゅうれいしのぎ)という技法は
竹内さんの考案によるもので、
流れるように彫られた曲線の連なりに映える
美しい釉薬の濃淡が特徴です。
この技法も将来的には当時代に新しく生まれた
王地山焼の歴史のひとつとして
保存・継承されていくのでしょう。
本展示では上記の作品のほか、
手彫りの土型に素地を押し当てて繊細な文様を作品に写し取る型抜きの技法や、
カンナを用いて表面に溝を彫る鎬(しのぎ)、表面を平らに削る面取りなどを用いた作品、
絵付けされた作品なども併せてご覧いただけます。
次に、近藤康弘さんをご紹介いたします。
しっかりとした土の質感に、
豪快な刷毛目や釉薬のしたたりが印象的な作品。
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近藤さんの作陶する栃木県益子町は
江戸時代末期から続く陶器の名産地です。
益子焼の名は、
民芸運動の中心人物でもあった濱田庄司や、
イギリス人陶芸家のバーナード・リーチの
功績により、全国的に有名となりました。
修行先の益子町にそのまま根を下ろし、
陶芸に打ち込む近藤さんの作陶法は近年ますます伝統的なものへと近づいています。
それは特定の様式や技法における伝統という意味ではなく、
陶芸の在り方の伝統、換言すれば源流という意味においてです。
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近藤さんにとってその道は、
陶芸家がひとつの職業となる以前、
生活の一部であったころの陶芸の在り方を
取り戻そうとする実践と言えるでしょう。
昨年、自身の手で積日の願いであった
登り窯を築窯したことで、
山からいただいた薪を用いて
作品を焼くことができるようになり、
少しずつその歩みは前進しています。
自身の住む土地の伝統的な素材や技法を下敷きに、
今の時代を生きる一人の人間の
生活を通してかたちになる、
原始の熱を帯びた陶芸作品をお楽しみください。
これまでに存在しなかった新たな技法を考案・実践することで、
王地山焼の歴史に新たな広がりをつくろうとする竹内さん。
原初の陶芸の在り方に近づくため、
陶芸以外のあらゆることを含めた生活の充実を陶芸に写し取ることで
自ずとにじみ出るような、内なる表現を目指す近藤さん。
それぞれに伝統的な素材、技法、様式を下敷きとする二名の陶芸家。
その共通点こそが、翻ってそれぞれの表現方法の違いを浮き彫りにします。
![](https://nittodo.jp/wordpress/wp-content/uploads/2023/04/DSC_4793.jpg)
その違いは陶器、磁器のそれぞれの質感、
表情の差と重なり、
心地よい緊張感となって展示空間を満たすでしょう。
ぜひ、会場で体感していただければと思います。
どうぞお運びください。