2022.10.26

【展示・販売】手仕事のさきへ7ー菊地亨・船木智仁ー

期間:2022年11月5日(土)- 11月21日(月)

日東堂は、「日本の藝と道具」の未来を担う作り手を応援しています。

七回目となるこのたびの展示では、二人の作家をご紹介いたします。
お一人目は茨城県笠間市の陶芸家菊地亨さんです。

菊地さんの器には厳密には同じ形のものはありません。
まず決めるのは、粘土の重さだけだと言います。
同じ重さの粘土からつくられるそれぞれの作品は、形はさまざまではあるものの、
菊地さんにとってそれらは全て「同じ」作品なのだそうです。
一つ一つの形が、手を通した素材との対話によって瞬間的に生まれていると考えると、
とたんに器が不動の「もの」から動的な「現象」のように思えてきます。
ろくろによる回転、やわらかく溶けた釉薬、刷毛目には速度が感じられ、
器が完成に至るまでの変化を細かなディテールから見て取ることができます。

今回、初冬の時節に合わせてつくってくださったのは、
マットで光沢のない白の釉薬と内側に塗られた銀色の艶やかな質感が程よい緊張感を持つ作品です。
冬の催事を静かに飾るうつわを揃えてお待ちしております。

お二人目は富山県滑川市の木工作家船木智仁さんです。

船木さんの作品がどんな素材でつくられているのか、
初めて見る方が一目で判断するのは難しいかも知れません。
漆黒の色味、ざらっとした表面に反射する光はおだやかで、落ち着いた印象を持ちます。
その重厚な見た目に反して、手にした時には木工作品らしい軽やかさを感じる、非常に魅力的な作品です。

これらの作品は木工ろくろという高速で回転する旋盤に取り付けた木材に刃を当てて直接削り出す手法で生まれます。

そして非常に特徴的な表面の仕上げは、蒔地漆という手法によるものです。
塗布した漆が渇ききる前に蒔かれた微細な砥の粉(石や土を細かく砕いた粉末)が定着することによって、
独特なテクスチャがもたらされます。

先に紹介いたしました菊地さんの作品とはまた違う形で、冬の食卓に無彩色の彩を持たせてくれることと思います。

表面に残された痕跡、もしくは作品の形の成り立ちなどを想像することによって、不動の「もの」を動的な「現象」と捉える事。
陶芸のろくろと木工ろくろ、それぞれの作品にそれぞれの運動がありながら、静と動が混ざり合って作品となる。

その背景を想像すること、静と動の均衡にそれぞれの作家の感覚を見出すことは、
手仕事の作品の楽しみかたの一つではないでしょうか。
素材の動きにさらなる動きを重ねる事、その動きを留める事、どちらも人の手だけがなせる業です。

ぜひ、会場で直接ご覧いただけますと幸いです。