2024.09.09

【展示・販売】手仕事のさきへ17 ー 竹内 保史 ー

期間:2024年10月5日(土)- 10月20日(日)

日東堂は、「日本の藝と道具」の未来を担う作り手を応援しています。

17回目となる今回の展示では
丹波篠山で王地山焼を制作する
陶芸家 竹内保史さんの作品を展示いたします。

王地山焼は篠山藩の藩窯として
江戸時代末期に 50 年間だけ焼かれていた
伝統的な磁器です。

繊細な文様と独特な色の釉薬の美しさが評価され、
おおいに栄えました。
明治維新の廃藩に伴い一度は廃窯したものの、
昭和 63 年に有志により
再度同じ丹波篠山の地に復興され、今に至ります。

王地山焼のような青色を呈する磁器は
総じて青磁と呼ばれます。
青磁の歴史は古く、紀元前 14 世紀の中国が起源とされます。
またその独特な色は「天青色」「秘色」という別名を持ち、
これは青磁がもとは皇帝や貴族のために製造されていたことに由来します。
古来より人々を魅了し珍重されてきた青磁に通じる、
うすく翠を帯びた青色は王地山焼の特徴の一つです。
ガス窯や電気窯の普及により、
青磁の制作は安定したと言います。
そして、その技術の発展が
現代青磁の新たな革新の機運となり、
現在も当代の作家により
様々な表現の可能性が模索されています。

竹内さんの考案した
流麗鎬 ( りゅうれいしのぎ ) という技法はその代表的な例です。
流れるように彫られた曲線の連なりに映える美しい釉薬の濃淡が特徴です。
竹内さんは、伝統的な技法を保存し継承する役割を持つ職人であり、
現代的な表現を通して王地山焼における歴史の拡張を試みる実践者でもあるのです。
何千年も前に中国で生まれた青磁が形を変えつつも、
つくり継がれていること。
また、それらが異国の食卓を彩る
食器の選択肢の一つとして、
今なお多くの人に愛されているという事実には
改めて驚きを感じざるを得ません。
そしてそのような長大な歴史の先端にあたる技術を、
われわれは身近に目にし、手で触れることができる。

手仕事とは一人の作家によってなされるのではなく、
無数のつくり手が繋いでいくものであることを、
竹内さんの作品は雄弁に語ります。
そして現代においてつくり続ける作家の手も、
未来へと繋がれていくのでしょう。


今回もお楽しみいただけますと幸いです。