期間:2024 年3月30日(土)- 4月14日(日)
日東堂は、「日本の藝と道具」の未来を担う作り手を応援しています。
15 回目となるこの度の展示では、
木工作家の安藤萌さんと、
陶芸家の鏡原愛莉さんの作品が並びます。
まずは、木工作家 安藤萌さんをご紹介します。
安藤さんの木の器やオブジェは、
高速で回転する旋盤に木材を取り付け、
刃物で削り出して成形する
ウッドターニング(木工ろくろ)という手法を用いて制作されています。
通常、木工においては作品の変形や歪みを避けるため、
乾燥させた木材を使用します。
しかし、安藤さんはあえて乾燥前の木材を使用することで、
成型後の作品を変形させ、
様々な表情の作品を制作されています。
また、そのような変形だけでなく、
欠けているところや、穴の開いた箇所なども
造形に取り込んで作品とするには、
まずその木材の個性を捉えることが必要です。
材木の種類や部位によっても変形の具合は異なるため、
あらかじめ完成を見越して造形する技術と経験が求められます。
形に木材を従わせるのではなく、
木材が落ち着く形になる余地を残すものづくりの姿勢が
安藤さんの作品の魅力となっています。
近頃は、食器の制作に特に力を入れていらっしゃるとの事で、
本展でも多くの木の器をご用意いただける事と思います。
次に、陶芸家 鏡原愛莉さんをご紹介します。
うっすらとひび割れたような質感は、
直接に触らずとも
その質感をわれわれの指に思い起こさせます。
陶芸のルーツである
土器に通じる土の印象を帯びたこれらの作品は、
そのフォルムにもどこか素朴さがあります。
鏡原さんにとっての作陶の根本は、
素材である土の質感そのものにあるといいます。
土の質感から呼び起こされる自身のイメージを形にするというプロセスにおいて、
形が先行することはありません。
土の印象に従うようにカーブやエッジを整えていく細かな作業の中に
洗練された美意識が感じられます。
また、土の印象を形にするのに最もふさわしい方法をとるため、
ろくろ、手びねり、型などさまざまな手法で成形することも
鏡原さんの作陶の大きな特徴です。
中には真鍮を組み合わせた作品もあり、
異素材との対比によって土の質感がより強く感じられるものとなっています。
素材の個性を尊重し、その意に沿うようにつくられた作品は、
翻訳された土の形と言えるかもしれません。
素材の性質、個性を尊重しつつ
作品化するということは、
ある意味で素材を「生きたもの」として
扱う事と言えます。
そして、そのような作家の素材への視線、
ものづくりへの姿勢の結晶である
一つ一つの作品もきっと「生きたもの」であるはずです。
なぜその形であるのか、の理由が
各々の素材の特性にある。
木と土の意に沿うお二人の作品は、
素材の違いを超えて深いところで響き合います。
それぞれの作品の細部に注目していただけると、
細かなディテールが素材本来の魅力を損ねる事なく、
全体として調和していることがよくわかります。
そのような真摯なまなざしから生まれた様々な形の作品を、
ぜひお楽しみください。