期間:2023 年11月8日(水)- 11月26日(日)
日東堂は、「日本の藝と道具」の未来を担う作り手を応援しています。
13 回目となるこの度の展示では、
石川県金沢市の陶芸家 シライナギサさんの
作品が並びます。
![](https://nittodo.jp/wordpress/wp-content/uploads/2023/11/instagramの投稿原稿-03.jpg)
光沢のないマットな素地に
流れる霧のような模様。
水墨画が立体化したような
印象を持つ人もおられるでしょう。
これらの作品は
磁器土を泥のような液状にした泥漿 (でいしょう) を
石膏で作った型に流し込んで成型する、
鋳込みという技法をベースにつくられています。
鋳込みという製法自体は、
細かな装飾にも対応した量産向きの製法です。
しかし、シライさんは型から取り出した、
まだ固まりきらない作品をひとつずつ、
自身の手で成型することで
作品にゆるやかな曲線を与えています。
まるで貝殻や木の葉がつくるような
やわらかで自然な曲線は、
素材の薄さや強度を直接確かめながらなされる、
手仕事の賜物と言えます。
![](https://nittodo.jp/wordpress/wp-content/uploads/2023/11/instagramの投稿原稿-04.jpg)
シライさんの作品のもう一つの大きな特徴は、
白と黒の二色のみで構成される模様です。
「霧流し」というシライさん独自の手法で
生み出される模様は、
流体の純粋な動きによって生み出されています。
そこには刷毛目などに見られるような
手の痕跡は感じられません。
シライさんが独自に調整をした
色違いの泥漿(でいしょう)が
石膏型に流し入れられる際の、
その自然に混ざっていく様子が
作品の模様として現れています。
「霧流し」においてコントロールできるのは
どのくらい反対色を含ませるか、
という選択のみです。
しかし、その重要性は極めて高く、
むしろその少ない手数こそが
図と地のバランスを通して
作品全体の印象を支えています。
また使用色を二色に限定することが、
ちょうど白黒写真がカラーの写真よりも
情景を強く想像させるような形で、
見る側のイメージが入り込む余白を構成する
要素になっている事も非常に興味深いです。
![](https://nittodo.jp/wordpress/wp-content/uploads/2023/11/instagramの投稿原稿-02-1.jpg)
色数や製作における手順を限定し、
手を加えるところと素材の動きに任せることの
バランスを探りながらも、
一つの作品として提出する。
その難しさの上に成り立つ均衡を通して、
われわれは作家の美意識に触れることが
できるはずです。
視覚的な美しさを感じるとき、
われわれの目は無意識ながら、
物理的・心理的に力の均衡が保たれていることをも
美の要素として確かに感じ取っているのでしょう。
そのように一つの手仕事の作品と向き合うとき、
作品は鏡のように自身が何に美しさを感じるか、
という感覚を映し出すものと言えるかもしれません。
ぜひ展示会場でご覧いただければと思います。
お待ちしております。