2023.02.22

【展示・販売】手仕事のさきへ 9ー植田佳奈・UTAIー

期間:2023年3月11日(土)- 3月30日(木)

日東堂は、「日本の藝と道具」の未来を担う作り手を応援しています。

九回目となるこのたびの展示では、
植田佳奈さんの作品とUTAIのボウタイを展示・販売いたします。

まずは、陶芸家 植田佳奈さんについてご紹介いたします。
なめらかなフォルムと、一面に施された緻密で微細な模様。
植田さんの手から生まれる作品は、
人工物のようで自然物のような不思議な佇まいをしています。

この一連の作品に用いられている手法は、
象嵌(ぞうがん)という技法の一種なのですが、
一般的にみられる象嵌とは少し違いがあるようです。
多くは彫り込んだ柄に
別の粘土をはめ込んで模様をつくり、
釉薬をかけて焼成します。
対して植田さんの場合は柄を彫って焼成してから、
絵付け用の顔料を表面に塗り、
それを拭き取ることで柄だけに着色されるという手法です。

表面の模様は、先の細いヘラのような道具を押し当てることで
ひとつひとつ刻まれています。
単純な作業を繰り返すことで、
手の動作の純粋な軌跡が作品に写し取られていると言えます。

「点が集まって、面になると思ってるんです」

半ば無作為とも言える体の動きから生まれる点の集積と、
手仕事の痕跡を感じるフォルムのバランスが
これらの作品の立ち位置を曖昧にし、
見る側の認識を揺さぶるのでしょう。

身近な石や植物を観察するように、
ぜひ直接ご覧いただけますと幸いです。

次に、UTAI のボウタイをご紹介いたします。

能楽の謡(ウタイ)の先生の袴にある結び目に着想を得てうまれた、
着物の生地で仕立てられるボウタイ。
ボウタイはもともとフォーマルな場で、
男性の燕尾服やタキシードに合わせて用いられる
襟飾りですが、
UTAI のボウタイは現代的な感覚で
どんな人にも日常の中で使用してほしいという
願いを込めてつくられています。

生地の由来は様々で、古くは明治・大正のものから新しい反物まで幅広く、
それらをもとの生地の格の高低に関わらず、魅力的だと
感じる柄をひとしく採用しています。
絹の織地も煎じ詰めれば糸の集まりです。
経糸と緯糸によって生まれる柄は単純な縞模様、
格子模様から複雑な柄まで実に多様です。
その柄の多様さ、布地の魅力をボウタイという同じ形に整えることで、
ひとめで伝えたかったとお話しくださいました。

一つとして同じもののないボウタイの中から
ご自身にお似合いになるものを探し、
身につけて出かける楽しさを感じていただければと思います。

自然の造形物や生物の体表の模様とは異なり、
人が手仕事でつくる模様は必ずその素材の組成や、
つくられる工程、道具の形に依存します。

この度の展示では、
同じようなかたちに様々な模様を施された作品が
一堂に展示できるとあって、
ことさらにその柄、模様の多様さに
注目していただけることと思います。

また異なる素材、異なる成り立ちによる、
よく似た模様の表現を通して、
陶土と布地による性質の違いも自ずと立ち現れてくるでしょう。

ぜひ、会場で直接ご覧いただけますと幸いです。