期間:2024年7月6日(土)- 7月23日(火)
日東堂は、「日本の藝と道具」の未来を担う作り手を応援しています。
16 回目となるこの度の展示では、
茨城県笠間市の陶芸家、菊地 亨さんの作品が並びます。
菊地さんの陶芸は、
まず粘土の重さを量ることからはじまります。
それから花器、湯呑み、茶碗など
おおよその仕上がりを決めてから
粘土を手で成形する中で、
かたちを決めていくというつくり方をされています。
そのため、プロダクト的な意味での
同一のかたちは存在せず、
同じ用途のためにつくられたものであっても、
全て異なるかたちの
作品となっていることが特徴です。
もっとも、菊地さんにとって同じ重さの粘土からつくられるそれぞれの作品は、
かたちが異なっていても全て「同じ作品」という認識なのだそうです。
制作の中で、
菊地さんがたびたび意識することが
「手くせ」だと言います。
自身の意識から離れて手の赴くままに
かたちをつくっていると、
つい同じようなかたちへと
流れていってしまうそうです。
そのため、意識的に異なるかたちになるよう、
修正をする必要があります。
何かをかたちづくる、という
作為のプロセスから距離を取るため、
多くの作家は自身のコントロールできない無作為の手法を取り入れます。
そのような陶芸の手法と比較して、自身の手の動きを無作為的に扱い、
そこに意識的な修正(作為)を加えていくという
菊地さんのつくり方は対照的に映ります。
陶芸は、頭で考えている状態と手で考えている状態を
往復しながら作品をつくる営みです。
この割合や度合いは作家により様々で、
だからこそ手仕事という一言だけでは表現しきれない
奥深さがあります。
無作為と作為の往復が堆積して
一つのものを形づくっていると考えると、
静的な陶芸作品が途端に動的で抽象的なものとして感じられます。
このような視点から、陶芸作品の成り立ちの中に
作家の意識がたどった道筋を想像してみるのも一つの鑑賞方法ではないでしょうか。
今夏の展示も、ぜひ楽しみにお待ちいただけますと幸いです。